女性の鼠径(そけい)ヘルニアの特徴や原因について

「鼠径(そけい)ヘルニア」を発症した場合は、経過観察となった場合でも自然に治癒することはありません。そのため、完全に治療を終えるには手術による治療が基本となります。
最近は、鼠径ヘルニア手術の技術が大きく進歩し、有効な麻酔薬が登場したこともあり、「日帰りの鼠径ヘルニア手術」が広く認知されるようになってきました。

脱腸とも呼ばれる鼠径ヘルニアは、その患者の多くが男性(約8割)と言われています。全体の割合だけをみると女性の鼠径ヘルニアは比較的少ないようですが、日本全国で鼠径ヘルニア手術を受けている女性の数は、年間で2万人とされています。

男性と女性では、鼠径ヘルニアを発症しやすい年齢層や鼠径ヘルニアの種類なども異なりますし、鼠径ヘルニアは性別や年齢に限らず誰にでも起こり得る病気です。
そういった点を踏まえても、「女性の鼠径ヘルニアの特徴や原因」などを基本的な知識として知っておくことは非常に大切です。

女性の鼠径(そけい)ヘルニアの特徴とは?

鼠径(そけい)ヘルニア

割合だけを見れば男性の方が鼠径ヘルニアを発症しやすいと言えますが、女性はもちろん、性別や年齢にかかわらず誰にでも鼠径ヘルニアを発症する可能性があります。
そこでまずは、「女性の鼠径(そけい)ヘルニアの特徴」を紹介します。

・女性は大腿鼠径ヘルニアを発症しやすい
鼠径(そけい)ヘルニアは、「外鼠径ヘルニア(間接)」「内鼠径ヘルニア(直接)」「大腿鼠径ヘルニア」という3つの種類があります。鼠径ヘルニア患者全体でみると、外鼠径ヘルニアを発症される方が多いとされ、男性の場合、最も多いとされるのが外鼠径ヘルニアです。
一方、女性の場合は、全体的にみると外鼠径ヘルニアを発症される方が多いのですが、男性に比べて「大腿鼠径ヘルニア」の発症率が高いといった傾向があります。

大腿鼠径ヘルニアは、鼠径靭帯の下から体の組織が正しい位置からはみ出してくる状態の鼠径ヘルニアです。出産を経験した女性に多くみられる鼠径ヘルニアですが、他の外鼠径ヘルニアや内鼠径ヘルニアに比べて、大腿鼠径ヘルニアの場合は「嵌頓(かんとん)の発生率が最も多い」ことが大きな特徴です。

嵌頓(かんとん)は飛び出している部分が手で押さえても引っ込まない状態を指し、これを放置してしまうと腸閉塞を起こす、あるいは腸に血液が流れずに組織が壊死して敗血症を起こすなど重篤な症状に発展し、生命にかかわることがあることから緊急手術が必要になります。
女性の場合、嵌頓(かんとん)になりやすい大腿ヘルニアを発症される方が男性に比べて多いことから、鼠径部分や太ももの付け根あたりに違和感がある場合はより一層注意が必要です。
・出産後に多くみられる女性の鼠径ヘルニア
女性の鼠径ヘルニアは、特に「出産後」に多くみられる症状です。そのため、20~40代で鼠径ヘルニアを発症する方が多いだけでなく、子どもをたくさん出産した経験を持つ女性が65~80歳で大腿ヘルニアを発症するケースもあります。

「鼠径ヘルニアは高齢の方に多いのでは?」といったイメージを持たれることがありますが、実際は年齢に限らず、若い女性でも発症する可能性があります。そのため、太ももの付け根や下腹部の下あたりにふくらみやこぶ、違和感などがある場合は注意が必要です。
・女性の鼠径ヘルニアに症状が似た病気がある
鼠径部付近にふくらみやこぶ、違和感などの他に、生理が重いなどの症状を同時に抱えている場合は、「婦人科の病気ではないか?」と考え、婦人科を受診される方が多いようです。
実際、女性の鼠径ヘルニアの症状は、他の病気の症状と類似することが多いことから、鼠径ヘルニアと正確な診断を受けるまでに時間がかかってしまうことも珍しくありません。

女性の鼠径ヘルニアに症状が似た病気や、鼠径ヘルニアと間違われやすい病気を以下でいくつか紹介します。

子宮内膜症・・・・・
鼠径部に痛みや腫れを伴う病気で、鼠径ヘルニアと間違われやすい病気の一つが「子宮内膜症」です。本来なら子宮内にあるべき組織が子宮外で発育してしまうことを子宮内膜症と言いますが、足の付け根や鼠径部にも発症することがあります。妊娠可能な年齢の女性に多いとも言われる病気で、鼠径ヘルニアと併発することもあります。
ヌック(Nuck)管水腫・・・・・
「ヌック(Nuck)管水腫」は、若年女性に比較的多くみられる鼠径ヘルニアに似た症状を持つ疾患です。出生後に腹膜鞘状突起が閉じずに残り、その内部に液体が貯蓄した状態になっています。ヌック管水腫は鼠径ヘルニアを診断されるケースが多いのですが、場合によっては単独ではなく、鼠径ヘルニアを併発している場合もあるので、その場合は手術が勧められています。
子宮円索静脈瘤・・・・・
「子宮円索静脈瘤」は鼠径ヘルニアに似た腫瘤を形成することから、鼠径ヘルニアとよく間違われて診断されることがあります。医者の間ではまだ認知度が低い症例であり、鼠径ヘルニアと子宮円索静脈瘤では治療方針なども異なるので、慣れた医師の診察を受けた上で正しい診断を受けることが大切です。
子宮円索静脈瘤の場合は経過観察が勧められることが多いですが、鼠径ヘルニアの場合は自然に完治することはないので、治療法としては手術が基本です。

鼠径ヘルニアが起こる原因について

鼠径(そけい)ヘルニア

女性の鼠径ヘルニアに限らず、男性の鼠径ヘルニアがなぜ起きるのか?という原因は未だ解明されていません。しかしながら、鼠径ヘルニアになりやすい方の特徴や、鼠径ヘルニアになる要因として考えられていることはいくつかあります。

例えば、性別にかかわらず子どもに「先天的」に鼠径ヘルニアが発症するケースがあります。この場合は手術で治療する場合もあれば、成長するに従い徐々に治癒する場合もあります。
また、「加齢」とともに筋肉や筋力が弱り、内臓を支えきれなくなったことが、鼠径ヘルニアを発症する原因として最も多いのではと考えられています。男性の場合は筋肉や筋膜の衰えが進む40代以降の中高年や、高齢者が鼠径ヘルニアになりやすい方と言われています。

他にも、重たい荷物を日常的に何度も運ぶ人や長時間立ったままで仕事をする人、咳をよくする人、便秘の人など、「お腹に力を入れる機会が多い方」は鼠径ヘルニアを発症しやすい人とされています。

女性で鼠径ヘルニアになりやすい人の特徴は、「妊娠」や「出産」などが要因となり鼠径ヘルニアを発症するのではと考えられています。妊娠中、とくに妊娠中期から後期では子宮が増大して腹圧がかかることから鼠径ヘルニアになることが多いと言われています。ただし、妊娠中の患者さんの手術は安全性を考えて原則行わないクリックが多いようです。
出産に関して言えば、過去に「多くのお子さんを出産された経験をお持ちの女性」の場合、高齢になった時に鼠径ヘルニアを発症する可能性が高いとされています。女性の場合は、鼠径ヘルニアの中でも大腿ヘルニアになることが多いと言われています。

鼠径ヘルニア治療の専門クリニックでは、女性の鼠径ヘルニアと似た症状を持つ病気と区別することができる専門の医師が診察にあたります。
女性の場合、鼠径ヘルニア以外の症状が太ももの付け根に発生するケースが多いので、別の症状や病気の可能性を考慮した上で詳しく診察を受けることができます。他の症状と鼠径ヘルニアを併発している場合は、CTによる画像検査や超音波検査などを加えて正確な診断を行った上で、同時に治療を行うこともあります。
下腹部や太ももの付け根あたりにふくらみやこぶなどを発見したり、違和感があったりした場合は、専門の医療機関を受診して、きちんと診断を受けられることをおすすめします。